わすれっぽいきみえ

みらいのじぶんにやさしくしてやる

本『こころ』を読んだ

確か中学の時だったと思うけど、『こころ』を国語の授業で読まされた。

友達が自殺する話なのでとても嫌な話だな、なんでこんなのを中学のときに読まされるんだろう、と素朴な疑問が頭をよぎったのを覚えてる。

でも中学のときに読まされるのは『こころ』の一部抜粋なので「そういやあれって全部はどんな話になってんだろうか」と長年何となく思っていたところに、去年スマホ買い替えがあって、その中に青空文庫の一冊として初めから『こころ』が突っ込まれてるのを見つけた。どうせタダで読めるんだし、時間が空いたときにゆるゆる読んでみるかと思って、実際ゆるゆる読んでいた。

もう結構前に読み終わってたけど、何となくのレビューでも書いておく。
すごく…言葉が汚いです。

やっぱり先生のことが私は嫌いだ

全部読んで、私は遺書を主人公に書き残す先生がやっぱり嫌いだな、と思った。
奥さんには何も伝えず主人公に「僕と君だけのひみつだよ」と死ぬ理由を伝えて勝手に死ぬ。「妻にはきれいなままでいてほしい」って、自分の旦那が自殺してしまった奥さんがきれいなままでいられるかよ、マジなんなの、何も知らせないことがきれいに終わらせることじゃねぇよ、ってものすごく思った。

漫画のワンピース、特別に好きって訳じゃないけど、ルフィがサンジに「死ぬことが恩返しだと思うなよ」って言い放つシーンがあって、まさにその通りだよなって思い出した。この先生のエゴとナルシズムと嫉妬と言い訳ひっどいし、この上なくみっともなくて、最後まで主人公に対して上から目線で「自分は先生と呼ばれるような人間じゃない」って言ってるけど、お前十分すぎるほど先生面してんじゃねぇかよ、と思った。

でもこんだけみっともない姿を描写できるのはすごい

嫌いだな、とは思ったけども、まぁ人間嫉妬くらいするよな、ちょっとしたことで優越感に浸ることはあるよな、と。どんなときにどう感じたか、というのをしつこいと感じるほど克明に書けるのはすごい。描写の仕方にはいろんな手法なり何なり名前があるらしいが私はそんなもの一個も知らんし、惚れた腫れたの話はいかにも俗っぽくて、ははーんまたですか、な気持ちになるんだけど、思い詰めていく様子はよく出来てるんだな、と思った。

私は中学のときに読んでも全くこんなことは考えなくて「自殺する話を授業で取り上げるって何やねん」「定期テスト面倒くさい」「こんなのをテスト問題で出されるのか」「Kより私の方が不幸だな」とエゴの塊みたいなこと考えてたけど、自分の趣味として読むときは好きに没入したり物語を放り出したりしながら読むもんだから、「そうか、面白いところは確かにあるのか」と思い直した。

主人公がなんで先生のことを好いてついていったのか全く分からないけど、なんか自分にはないところを見たか感じ取ったかでついてっちゃったんだろうな。

おしまいに

私は勝手に遺書の続きがあるもんだと思ってたけど、ないんだね、この話。遺書を読み終わって主人公が先生の家のところまで行って、もう少しなんかあるんかなと思ったけど、先生が「死にます」って言い遺しておわりだった。すごく尻切れとんぼ感。読み終わって「あれ?これで終わり?」って二度見した。

でも私があると思い込んでいた「続き」を書く意味あるんかな、と思ったら、ないな、とも思って、なるほど終わりなんだ、と納得した。

…しっかし私のスマホにプリインストールされてる小説、『こころ』、『藪の中』、『人間失格』って暗いのばっかりだな。なんかもっとハッピーになれる話をプリインストールしなかったのなんでなの…。

こころ (新潮文庫)

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地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇 (岩波文庫)

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人間失格 (集英社文庫)

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